「さあ、写真をはじめよう 写真の教科書」感想とレビュー
2016-04-01 カテゴリ:カメラ
インプレス発行の書籍「さあ、写真をはじめよう 写真の教科書」を読んだので感想を書こうと思う。
はてブで上位に上がっていたのを見て「まさにこういう本が欲しかった!」と速攻で買った。帯の「写真学科の学生が授業で実際に使用している」という文言が強烈だった。
この本が使われているのは東京工芸大学の写真学科で、著者も東京工芸大学出身の6人だという。
本当にすぐ読みたかったのでKindle版を買った。Kindle版の価格は1,728円で紙版より安いが、紙版に付属している「簡易版カラーチャート」が付いていない。
写真は撮りながら学ぶ
「写真の教科書」というタイトル通り、写真に関することが網羅的に書かれている。ページ数は120ページほどで、読むだけなら2時間もあれば足りると思う。2部構成で、第1部が制作演習、第2部が基礎知識となっている。
制作演習から始まるのか!? と面食らったが、順に読み進むのではなく、制作演習を進めながら適宜、基礎知識のページに飛んで理解を深めていくという作りになっている。知識よりもまず実際にカメラを持って写真を撮ろう、ということなのだろう。
制作演習では内容ごとにテーマが与えられ、それについて技術と表現、双方の課題が設定される。
最初に扱う内容は「適正露出と被写界深度」、与えられるテーマは「光と影」。ここでは技術的課題としてカメラの基本操作の習得が求められ、表現上の課題として明暗の観察やテーマに対する理解が求められる。
こうした課題に取り組みながら、カメラの扱いと写真の撮り方に関する学習を進めていく。
誰に向けて書かれたものか
まえがきには「これから写真を学びはじめるみなさまに、制作に必要でかつ最も基礎的な写真の技術と知識を、できるだけ分かりやすくお伝えすることを第一の目標にしてこの教科書を作りました。」とある。初心者が対象だと考えていいだろう。図版を多用し文章も分かりやすく書かれている。
対して、120ページほどという分量のため、細かい説明は大きく省略されている。第1部では7つの内容を扱っているが、本来ならばそれぞれが本1冊で足りるかどうかという長大なものだ。その点で、ある程度独学してきた人にとっては物足りなく感じるところもあると思う。
だが網羅的に扱っているがゆえに、この本自体が写真という学問の目次のような役割を果たしてくれる。俺もカメラに関しては独学ながらそこそこ学んだつもりだったが、この本を読んでまだ知らないことが結構あるものだと気付いた。
そういう意味で本書は、独学で写真を撮ってきて行き詰まりを感じているような人にとって、「ここは知っている、ここは知らない」ということをはっきりさせ、学び直すための基準を作ってくれると思う。
良かった点
いくつか思い付いたので列挙していく。
・実習形式で進められ、結果を確認できる
・図版が多用されて分かりやすい
・網羅的な本なので、一通りの知識が身に付く
・同じく、自分にどの部分の知識が欠けているのかチェックできる
悪かった点
教科書といいながらもこれ1冊で写真をマスターするのは不可能だ。
本書はどちらかというと教科書ではなくレジュメに近い。あくまで写真という学問の道しるべと考え、各項の詳細な内容は別な本で掘り下げていく必要がある。
たとえばカラーマネジメントなんて本書では3ページしか触れられていない。カラーマネジメントについて3ページで理解可能な説明をすることなどできるわけがない。
総評
「写真を撮るのは好きだけど本格的な勉強はしたことがない」という人なら買って損はない。ただし本書の作りからして、受動的な姿勢でいてはメリットを得にくい。
あとがきにも「ただ教科書を読んだだけで写真が上手に撮れるようになるなどということは、万が一にもないことでしょう。」とはっきり書かれている。
結局のところ、2,000円の本を1冊読んだだけでプロ写真家のようになれるわけは無いのだ。
ちなみに俺がこの本ではじめて知ったのは ストロボの「先幕発光」「後幕発光」
や、「レンズシャッター」「電子シャッター」という用語だ。
ストロボは持ってないので全く分からないし、シャッターにいろんな仕組みがあることも知らなかった。これに気付けただけでも収穫といえば収穫。